001|新撰組活劇「いつか何処かで〜沖田総司物語」|小説「宗次郎とみつ」

沖田総司イラスト

「も〜い〜か〜い・・・」  「まぁ〜だ〜だ〜よ〜」・・・・・・・・・・・ 「も〜い〜か〜い」  ・・「ま〜だ〜だ〜よ〜〜」・・・・・・  「も〜い〜か〜い・・・」  ・・「も〜い〜よ」
 「宗次郎みぃ〜つけたっ」
子供達がいっせいに宗次郎のそばに駆け寄ってくる。
なぜか、いつも、かくれんぼとなると宗次郎は、すぐにみつかって、 鬼の役をするはめにばかりなるのである。
今日も今日とて、最初の鬼をきめるクジには、当たらぬも、かくれんぼがはじまれば、 すぐにみつかって、鬼の役がまわってくるのである。

 「宗ちゃんとかくれんぼしてもおもしろくな〜い」

遊び仲間の一人がいいだすとこれもいつもと同じ・・・
うつむいていじけてしまう宗次郎。
仲間はずれになって泣きながら帰ってくる宗次郎にいつも姉みつは、やさしくなぐさめてくれる。

 「あなたは、優しすぎる子なのよ・・・だからすぐに鬼になっ てしまうの・・・」

幼い宗次郎には、その言葉の意味などわからなかったが、
母親代わりのやさしい姉が大好きだった・・・。

  ・・・でも、鬼はいやだ・・・宗次郎は、みつに抱きしめられた腕の中で呟いた。

みつは黙って宗次郎の頭を撫でてやった・・・。
宗次郎6歳の秋であった。


 「総司・・・」
 「おい、総司っ」
 「こらっ、宗次郎っ」

 「やだな、土方さん・・私は、改名したんですよ・・・沖田総司に。」

 「何言ってやがる、さっきから呼んでたのに返事しなかったのは、お前じゃないかっ」

大きな欠伸をしながら総司は、背伸びをした。そして少し目を細めて空をみた・・・

 「ちょっとね・・・懐かしい夢をみていたんですよ・・・」

 「はっ、夢だとっ
  お前よくこんな時にのんきに昼寝なんかできるな」さすがの土方歳三もあきれた。

さもあらん、土方歳三にしてみれば、総司のお気楽さがうらやましくもあり、 腹立たしくも思えた。
幕府が募集した浪士隊に加わり、将軍警護という目的のはずが、実は攘夷軍、 つまり幕府に資金だけださせてその実、幕府に反旗を翻す者をあつめるのが目的だと わかったとき、試衛館一門は、江戸に帰る浪士隊と決別し、ここ壬生村に残ることを決心した。
そして、なんとか、会津藩預かりの任をまかされることとなったばかりである。
これからいかにして、会津藩との繋がりを強めていくか・・・・
それに必死になっている、近藤、土方とは裏腹に、総司といえば、 そんなことどこふく風といったように、 居を借りている八木邸の子供たちと無邪気に遊びまわっている。

 「ここは、この壬生村は、日野に似てますよね・・・   さっきまでね、八木さんとこの子供達とかくれんぼしてたんですよ   ふふ・・だからかな・・・子供の頃のあんな夢をみたのは」

懐かしそうに空を見上げた。

 「おまえなぁ・・・我らが壬生浪士隊をこれから先、どうやって・・・」 土方がたたみかけようとすると総司はその言葉をさえぎって土方の眼を見据えていった。

 「私は、近藤先生と土方さんについていくだけですから。」
本心だった。
自分の意志はそこにしかない・・・それは、この京へのぼると試衛館一門で決めたとき、沖田総司が己自身に誓った決意だった。
 「本当に俺達について来てくれるのか・・・その道がたとえ・・・修羅の道でも」
今度は土方が総司の眼を見据えて尋ねた。

 「どこまでも」総司は笑って答えた。
そして、ふたたび空を見上げた。
しかし、その目には、昔を懐かしむものはなかった。