011|新撰組活劇「いつか何処かで〜沖田総司物語」|小説「囁き」

「沖田っ、お前ならどうしたっ
増田が目にかけていた自分の配下の者だったらっ」

永倉新八は刀に力を込めたまま、沖田総司に訴えかけた。

「・・・・許せなかったでしょう・・・この女を」
総司とて永倉の悔しさを承知していた。

「だったら、どけっつ沖田っ」
永倉の怒りは頂点に達している。

総司も鞘に収まっている刀に力を込めた。
いざとなれば鞘から抜いてでも永倉を止めねばならない。
それが、この場に居合わせた自分の責任である。

「そして、永倉さん、あなたが今の私の立場なら、あなたは私をこうして止めた。
 私は、あなたの腕をこの場で斬り落としてでも止めますよっ」
 総司の意を決した最後の説得であった。

「ならばっ、抜けっつ、沖田っつ」
永倉は怒りに呑まれている。

抜くしかないのか・・・総司が柄に力を込めた
がその時、
緊迫の幕をやぶる声が響いた。

「永倉っ」
  土方歳三がこちらに近づいてくる。

「あんな姿をさらしたままでは哀れだろ、
他のヤツじゃなくお前が手厚く弔ってやれ・・・」

土方歳三が永倉新八を背後から抑えた。

そして・・・
そう、聴き取ることができたのは、耳元で囁かれた。 永倉本人と土方の口の動きを読んだ沖田総司だけであろう。

「・・・そんなに急くことはない・・・
いずれ、時が来たら、・・・やれ」

永倉の刀を握る手が緩んだ。
土方が永倉の刀の柄を握り、永倉の代わりに鞘に収めた。
永倉は、退いた、土方の言葉に頷いて」

・・・時が来たら・・・

その『とき』が何を意味しているのか、
それを感じているのは、おそらく試衛館出身の幹部だけであう。