025|新撰組活劇「いつか何処かで〜沖田総司物語」|小説「祇園山緒」挿絵「言付け」「正眼の構え」沖田総司イラスト

「化け物・・・・鬼だ。おまえこそ・・・まさしく、人を斬り、人の血を啜る鬼だっつ」

「だから、言っただろう・・・新撰組に棲むのは、鬼だ・・・と」
背後より土方歳三の声がした。
土方は、まだ先ほどと同じ、ただ腕を組み座っていた。
沖田総司の表情は動かなかった。
ただ、人としての感情をもたぬ眼をしていた。 そしてその冷めた眼をした男は、刀の切っ先を微動だにさせずに新見錦に告げた。

「ご同胞からの伝言を、言付かって参りました。
落ちあう先は、この祇園の「山緒」ではなく、
・・・賽の河原にて、お待ちするとのことです。」
挿絵「言付け」新見錦に刀を突き付ける沖田総司イラスト 新見錦にそう告げると沖田総司は、切っ先を新見の頸動脈に突きつけたまま、折敷の体勢からゆっくりと膝を床から離し、正眼の構えへと移った。
そして、総司の剣先が敷居を半歩跨いでいる新見の体を、少しずつ部屋にもどす。
刃は新見の脈打つ首筋にピタリと吸い付いている。
そう、あたかも蛭が血を吸うがごとく。

挿絵「正眼(青眼)の構え」刀を正眼に構える沖田総司イラスト

新見錦は、分からなくなっていた。
この首に突きつけられた刃から垂れる血が、同志のものか、それともすでに自分の首から流れ出ているものか。
ただ、確かなのは、体を一寸でも前に進ませれば、踏み込めば、いま目の前にいる晴眼の構えをしたこの男から、瞬時にくりだされる突きが、自分の喉仏を貫くということだ。
新見は、ただ・・・ただ・・・剣先に押されながら、うしろに歩を向かわせるしかなかった。