026|新撰組活劇「いつか何処かで〜沖田総司物語」|小説「祇園山緒 血刀」挿絵「深み」土方歳三、新見錦イラスト

「新撰組は、いま、会津に『誠』を試されている。」
土方歳三が、膳の傍らにあった新見錦の脇指を手にしながら、立ち上がった。 そして、それを鞘から抜き、懐紙を巻き付けている。

「いま、新撰組から倒幕の連中との繋がりを、おもてに出すわけにはいかないんでね。新撰組は、何があっても幕府を守る。
その『誠』を試されている。」

この時に、新撰組から反幕志士との繋がりがあったと知られるわけには、いかない。
あんたには、水戸天狗党の間者としてではなく、あくまでも、新撰組副長として、隊規に反したという責めで腹を切ってもらう」
新見の背後で土方が止まった。

それを合図ととるかのように沖田総司は、新見の首に突きつけていた刀とともに退いた。
新見もまた、深く息を吸うとともに刀を握る手を緩めた。
だが、つぎの瞬間、眼に血筋を浮かび上がらせながら、目にもとまらぬ速さで踵を返し、背後にいる土方に刀を振り下ろした。

ズブッ

刃が人間の肉に突き刺さる音が部屋に響いた。
新見錦が土方歳三にしなだれかかる。
土方の手にした脇指が、新見のはらわたを貫通し、背に突き出ていた。
新見が計っていた間合いより、土方は新見の懐に入る位置に来ていた。
そして、新見の体が背後に向きを変える瞬間、土方の持つ脇指しは、新見の腹を貫いた。

「はやく、いかないと・・・おいてきぼりをくらうぜ、
三ツ瀬の川の深みを、一人で渡るのは寂しいだろ。」

新見錦が腹を押さえながらくずれ落ちた。

挿絵「深み」脇差で新見錦を刺す土方歳三イラスト 挿絵「深み」脇差で新見錦を刺す土方歳三イラスト