029|新撰組活劇「いつか何処かで〜沖田総司物語」|小説「独楽」挿絵「独楽」童子イラスト

二〜三日続いた雨も夕方には止んだ。

「にいちゃん、なんぎやなぁ、ぶんまわしでけへんのかぁ〜」
壬生寺の境内から、子供達のため息混じりの声が聞こえる。
八木家の上の子供が、独楽を買ってもらったからと、沖田に回してくれとせがんだのだ。

「・・・こうして・・・こうだろ・・・」
不慣れな手つきで必死に独楽に紐を巻き付けている。

「よしっ、出来た。今度こそみてろよ、そらっ」
しかし、独楽は軸を中心に立って回らずに、そのままコロコロと石畳を転げていった。

「は〜〜〜〜っ・・・」子供達が顔を見合わせ、慌てて駒を追いかける総司をみて、また溜息をついた。

「おじぃ〜はんが、ヨリをあんばいまかんとあかんゆ〜てた」

「ほや、ゆ〜てたぁ〜」弟が兄の口真似をする。 沖田総司も、また頭を掻きながら口真似をし、復唱する。 「ヨリ・・・紐のことだろ・・・だから・・・紐を独楽にしっかりまきつけてだな・・・  よしっ」

シュッツ

「あっ、しまったっ」
勢いあまって独楽が、地面から跳ね上がり宙を飛んでしまった。地面の上でなく独楽は、空をくるくるまわっていく。

パシッ

勢いよく飛ぶ独楽を、いともなく素手で受け止めた人間がいた。

「芹澤先生」

夕涼みに散歩にでた芹澤がそこにいた。
独楽をポーン、ポーンと二度三度、放り投げては手のひらで転がしている。

「力まかせに回そうとしても、独楽はまわらんぞ、沖田」

どれ、かしてみろ・・・と沖田総司の手の独楽まわしの紐をとった。そして慣れた手つきで、くるくるっと紐を独楽に巻き付け、
「そらっ」
芹澤のかけ声とともに、独楽は軸を中心にくるくると美しく回った。

「わーっ」
最初は芹澤に怯えていた子供達が、芹澤のもとに駆け寄り、勢いよく回る独楽に
きゃっきゃと見入っている。

挿絵「独楽」独楽で遊ぶ着物姿の子供イラスト 「すごいですね、先生がこんなに独楽回しが上手いとは、知りませんでしたよ」
沖田総司も驚きながら、くるくる回る独楽を見入っている。

「はっはっは、ガキのころは、村一番の独楽回しだったんだぞ
けんか独楽では、だれもわしに勝てなかったからなっ」
芹澤は、誇らしげに笑った。
総司も笑った。

「芹澤はん、もいっかいや」
回転を止めた独楽を芹澤のもとにもってくる。
それをよしよし、みとれよと
再び独楽を見事に回し、子供たちを喜ばせた。
総司は、腰を下ろしその様子を穏やかな目で見守った。