032|新撰組活劇「いつか何処かで〜沖田総司物語」|小説「密命」挿絵「新撰組局長」近藤勇イラスト」

仄暗い部屋を、一本の蝋燭がゆらゆらと影を映す。
しとしと降る雨の音が男たちの呼吸する音をかき消す。
八木家の一室に数人の男達が息を殺し、一人の男の命令が下るのを待っている。

「会津公は、こう言われた・・・二股の大木は無用・・・
 一本の幹となれ。とのお言葉である。」

近藤勇は、土方歳三、沖田総司、井上源三郎、永倉新八、原田左之助に会津より下された言葉を伝えた。そして続けた。

「我々は、根元から切り倒される前に我々の手で、分かれた幹を切り落とさねばならないっ」

そう言い放つ近藤の眼に寸分の迷いもなかった。居並ぶ新撰組の強者たちの眼にもそれはなかった。
そして沖田総司の眼にもなかった。
一人、一人の眼を見、確信するかのように頷き、近藤勇は改めて全員を見据えた。

s挿絵「新撰組局長」近藤勇イラスト

「いいか、けっして失敗は許されぬ。
そして何人にも気取られるなっ
だからこそ、この人選とした。
顔を見られれば、その者も斬れっつ
たとえ、それが女子供であってもだ
斬りたくないなら、決して見られるなっつ」

普段の情に厚い近藤の表情はなく、その顔は志士たちからも恐れられる剣客集団、そして闇の一面も担う暗殺集団、新撰組局長の形相と化していた。

「明後日、恒例の角屋にて会合の後、決行する
以上っ」