034|新撰組活劇「いつか何処かで〜沖田総司物語」|小説「夜道」挿絵「夜道」沖田総司、芹沢鴨イラスト

平山たちは、沖田がいてくれることに感謝した。沖田にあとをまかせ、とりあえず自分たちは籠で先に屯所に 向かった。

しとしとと降る雨の中、沖田総司は芹澤鴨をおぶり、ぬかるんだ道を歩く。
ただ、黙って・・・・ 一歩・・・二歩・・・・と。

「はっはっは」芹澤が陽気に笑う。

総司は、ただ歩く、あの時と同じ道を歩く。
あの月夜に・・・芹澤をおぶって歩いた時と同じ道を歩く。
だが、月は出ていなかった、鉛色の雲が月を覆い隠していた。
総司の腕も重かった・・・鉛の塊を背負っているかのように。

そして、その二つの影に付き添うように、闇に紛れながらつける二つの影があった。

「今、やるかっ」原田左之助が柄に手をかけながら、土方歳三に呟いた。

土方歳三は、目を細めながら原田左之助の手を制した。

「いや、だめだ。
みろ、芹澤の腕を、いつでも刀を抜ける体勢でいやがる。
俺達が後ろから襲うと同時に、瞬時に総司の首を切り裂き俺達に向かってくる構えだ。
総司も覚悟の上で、芹沢をしょっているんだ」

確かに芹澤は右手を総司の首に回し、左手で総司の腰の刀の位置に、自らの刀を重ねるように持っている。あれならば、瞬時に右手で刀を抜くことができた。
土方の言葉に原田が唸った。

「総司に託すしか・・・ない。」

そう、ただ自分たちは、こうして張りつめた二つの影に付き従うしかなかった。
さきほどまで顔にあたっていた雨粒も消えていた。

「重いか、沖田っ」芹澤鴨の声が闇夜に響く。

挿絵「夜道」芹沢鴨を背負い木立の中を歩く沖田総司イラスト

「わしは、重いかっつ」

もう 一度響く。

「・・・はい。」目を伏せながら沖田総司は答えた。

「そうか、重いか。ならば、ここで降ろせ。」
芹澤鴨の潔いまでの言葉が心に響いた。

挿絵「夜道」沖田総司イラスト
あの時、あの月夜に、芹澤のその言葉に笑いながら答え、けっして芹澤を降ろさなかった自分がいた。
「背負いきれなかったら、斬れ」そう言った芹澤を降ろさずにいた自分がいた。

・・・・だが・・・・もう・・・・それは・・・・

総司は、ただ黙って腰を落とし、芹澤に降りるように促した。
それが、答えだった。
あの時と違う自分がいた。芹澤鴨という豪傑を背負いきれない一人の男が、
そして、新撰組がそこにあった。