038|新撰組活劇「いつか何処かで〜沖田総司物語」|小説「剣戟」挿絵「二つの影」「鯉口を切る」土方歳三、原田左之助イラスト

ガキッ
キーンッ

鋼と鋼が火花を散らしながら唸る。
沖田総司と芹沢鴨のいつ果てるともしれない剣戟はつづく。
それに見入る二つの影・・・・しかしそれは、今だ鉛の雲に覆われた月の光りから隠されている。

「強いなっ・・・やはり、芹澤は」
原田左之助が息を殺すように呟く。前方で繰り広げられている剣戟に、土方歳三は、まばたき一つ せずに、眼を見開き見ている。しかし、その左手は刀の鍔をおし、鯉口を切ろうとしている。

「でるかっつ」原田左之助も、鍔に手をかける。

 「いや、まだだ、まだでれん」
体は臨戦態勢を保ちながらも、土方歳三は原田左之助を押しとどめる。

「しかし、分が芹澤にあるようにみえますよ、
沖田が押されている、このままじゃ・・・もしかして」
原田左之助の眼には、沖田総司が芹沢鴨の剛剣をかわすだけに、追われているように見えるのだ。 土方にもそう見えていた。

沖田総司は、左右に身を転じながら芹澤鴨の剣を受け流している。
五分と五分・・・という戦いではない。四分六で芹澤の剣が勝っている。

「だが、いま俺達がでれば沖田の速さが鈍る、芹澤の太刀筋は重い、まともに受ければ叩き割られる。 その重い剣を、あれだけかわせるのは沖田の速さの技だ。俺たちがいけば、沖田にとって避けなければならないものが できる、障害ができる。
そして・・・・速さが鈍ったところを、芹澤は確実に捕らえる、だろうな」

土方歳三の言葉に、原田左之助は頷いた。
「だが、土方さん、もし沖田が・・・」

挿絵「鯉口を切る」鯉口を切っている土方歳三イラスト、「抜刀」彼方を抜いている原田左之助イラスト

カチッ
原田左之助の問いかけに答えるかのように、土方歳三が鯉口を切る。

「芹澤鴨は、必ず斬らねばならない。新撰組のために、我々が作り上げる新撰組の将来のために、 たとえ、誰かを犠牲にしてでもだ。」
それが、我々がこの京都でなすべきことなのだ。一本の大きな幹を持つ、強い新撰組をつくりあげるために。
そう、沖田総司なら刺しちがえてでも芹澤鴨を斬る。 いや、たとえ芹澤を道連れにできずとも、急所は必ずつき、あとを我らに託すはずである。そういう男だ。 だが・・・
「原田、いつでもでれる覚悟をしておけっ」

「おうっ」土方歳三の言葉に原田左之助は刀を抜いて応えた。