052|新撰組活劇「いつか何処かで〜沖田総司物語」|小説「刮目」挿絵「刮目」沖田総司イラスト

そうだっ、沖田なら・・沖田総司ならば助けてくれるっ
あの時も、永倉新八の刃より、この身を守ってくれたではないかっ

パタッ
パタッ

雫が畳を濡らす。
ずぶ濡れの一人の男が、敷居を濡らす。 お梅が跨ぐことを許さぬ敷居を男は跨ぐ。

「あっつ」
嗚咽するかのように梅が叫んだ。
その姿に梅は、神仏が自分の願いを聞き届けてくれたのだ と・・・
自分を助けてくれる男が、現れたのである。沖田総司が目の前に現れてくれたのである。
這いずるように、梅は総司の足元にしがみついた。

「助けてっ、助けとぉくれやすっつ」
お梅は、喉が裂けるが如く必死に叫んだ。

しかし、自分を助けるべく現れたはずの男は、何もゆってくれなかった。

挿絵「刮目」障子に手を添えたたずむ、ずぶ濡れの沖田総司イラスト

「何処に」土方歳三の言葉が、部屋に響く。
お梅の耳には、土方歳三の何に対しての所在云々かもわからぬ問いかけだったが、それに沖田総司は、眼を隣りの部屋に移すことで答えた。
その視線の先にあるのは、土方が斬った平山の躯がある部屋である。
そして、そこにはもう一体、さきほどまでなかったはずの躯が横たえられていた。
それは、沖田総司と同じように濡れた芹澤鴨であった。

何を言っているのか・・・
返答なく立ち尽くす男に、必死にしがみつく女は、男を仰ぐように見た。