006|新撰組活劇「いつか何処かで〜沖田総司物語」|小説「妖花〜お梅」

新選組屯所写真  文久三年、新撰組が浪士隊としてこの京に入ってはじめての 夏が過ぎようとしていた。
京の盆地ならではの蒸し暑さも少しは和らぎはじめた頃、近藤勇は、会津本陣のある金戒光明寺に呼び出されることが多くなった。

「また、お呼びかい」
 土方が近藤を気遣うように言った。

「しかたないな・・・」
近藤にとってもけっして心軽くして行ける事情ではなかた。
「芹澤鴨の所業には、目に余るものがある、なんとかすべし」
その旨だけが伝えられる。

しかし、近藤には決断することができなかった。
確かに、芹澤の行動は許し難いことばかりである。 商家を脅し、金を出させ、逆らえば容赦なく打ち据える・・・だが、新撰組が・・・いや、浪士隊を離れてこの壬生に留まった頃より新撰組が会津藩に認められるまでの間、金の工面をしてきたのは、他でもない芹澤鴨であった。
金策の方法は言葉にすることすら憚られるやり方であった。
・・・強請、集り、脅し・・・
それに違いはなかったが、紛れもなくそのおかげで自分たちの今があるのである。
きれい事だけでこの新撰組が生まれたわけではなかった。その汚れたものをすべて芹澤に被せてしまってよいものか・・
近藤勇の心は揺れていた。

「だが、いずれかたをつけることになる」
土方のその言葉に頷くしかなかった。
だが、めずらしく芹澤がおとなしい日が続いた・・・
夢中になる女ができたのである。
名は『お梅』といい、菱屋という商家の妾である。
菱屋の主が芹沢に貸した金の回収に頭を抱えた結果、苦肉の策として女を使って懐柔しようとしたのである。
案の定、芹澤は色香漂うお梅に夢中になった。
そして、とうとう自分ものにしてしまったのである。
最初はいやがっていたお梅もしだいに芹澤になびくようになった。
近藤、そして土方もそれで芹澤がおとなしくしているなら、女の 一人や二人、屯所に来ることを住まうことすら、大目にみていた。
しかし、それが甘かった。
最初はしおらしかったお梅が次第に本性をあらわしはじめたのである。
さすがの女に関しては百戦錬磨の土方ですら梅の本性を見抜くことができなかった。